1866年、フョードル・ドストエフスキーが『賭博者』という長編小説を発表しました。この小説は、昔も今もギャンブルがあらゆる創作活動のインスピレーションの源泉であることを示しています。作家はギャンブラーを作品に登場させ、画家はエキサイティングなギャンブルの一場面を描き、またカジノやギャンブルをテーマにした素晴らしい映画も数多く作られています。

ドストエフスキーの『賭博者』は、街のカジノの常連であるアレクセイ・イワーノヴィチを主人公としています。ルーレットを好むアレクセイは、ルーレットで幸運を掴んだことから、自らが家庭教師を務めている裕福な家庭の姪であるポリーナの目に留まります。『賭博者』は、ギャンブルを中心に描いた世界初の長編小説かもしれませんが、多くの画家たちは、それ以前にも、すでにギャンブルと密接な関係を築いていました。

バロック時代最高の画家である伝説のカラヴァッジョも、ギャンブルの興奮を描いています。「トランプ詐欺師(The Cardsharps)」は、間違いなく彼の最高傑作であり、彼を一躍スターダムへと押し上げた作品です。16世紀の作品であるトランプ詐欺師は、2人の少年がカードゲームに興じており、1人がイカサマをしている場面を描いています。

英国でも、画家たちがギャンブルを描いてきました。フランシス・ベーコンとルシアン・フロイドという2人の偉大な画家たちも、ギャンブルを愛好していました。ベーコンは賛否両論を巻き起こす人物で、熱心なギャンブラーでもありました。彼はギャンブルへの愛を原動力にして、晩年まで傑作を生み出し続けたという説もあります。

他方のフロイドはギャンブルとアート作品を結びつけることはありませんでしたが、競馬を愛好していたようです。画家としての成功によって得たお金でギャンブルを楽しんでおり、ブックメーカーに対する借金を自分の作品で返済することもあったようです。

様々な創作物にギャンブルが取り入れられてきたのは偶然ではないでしょう。リスクを取って未知の領域へと飛び込みたいという欲望とクリエイティブな精神が生み出すインスピレーションとの間に繋がりがあると考えられます。

カジノでのギャンブルには、ランダム性があります。ルーレットの玉が転がり、スロットのリールが回っている間、プレイヤーは何が起きるか分からないという興奮に包まれます。単に大金を手に入れたいというだけではないのです。

真っ白なキャンバスや原稿用紙の前に座って、どうなるか分からないままに作品を作り上げていくというのは、ギャンブルと類似しています。また、創造した作品を公開することは、ギャンブルと同じく大きなリスクを伴います。世間の反応がどうなるのか分からないというのは、エキサイティングかつスリルに溢れています。

ギャンブルとクリエイティビティの心理学的な関連性について研究している科学者は、今のところいないかもしれませんが、私たちは毎日のようにそのエビデンスを目の当たりにしています。将来、この現象が詳細に研究される可能性は十分にあるでしょう。今後に期待したいところです。