人間らしさを見つめる、
これからのクリエイティブ。

選びきれないほどのモノや情報であふれたいま、私たちに本当に必要なものとは?
人の気持ちや心地よさ、人間らしい感覚に立ち返ったクリエイションを行う、20組を紹介する。

人間らしさを見つめる、
これからのクリエイティブ。

選びきれないほどのモノや情報であふれたいま、私たちに本当に必要なものとは?
人の気持ちや心地よさ、人間らしい感覚に立ち返ったクリエイションを行う、20組を紹介する。

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2020.03.27

ありきたりではない発想で、建築に新たな広がりを。

海法圭KEI KAIHOH

建築家

1982年生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。在学時に安藤忠雄建築研究所やオランダで実務経験を積む。西沢大良建築設計事務所を経て、2010年独立。東京理科大学、東京電機大学にて非常勤講師も務める。

「箱根本箱」のラウンジ。本好きでなくともワクワクする光景だ。海法さんいわく「訪れる人が『人と本とがともにある暮らし』を見つめ直すことができる空間を目指した

オランダの建築事務所に勤務していた頃、QOL(生活の質)の高さに感動し、「日本で実践しよう!」との思いで帰国したという。

海法圭さんが生み出す設計には驚きがある。一昨年オープンした話題のブックホテル「箱根本箱」もそのひとつ。たとえば大きな本棚の中に忍び込むように入って本が読めるなど、館内のいたるところに仕掛けが隠されている。
「人と本の思いがけない出合いを〝風景〞として設計しました。都市空間では通常見られない人が本を読む姿が、生まれるといいなと思います」
 過去には、海上に薄膜ガラスを浮かべる「水平線の水族館」などを発案した独創的なアイデアも、彼ならでは。
「ダイビングやパラグライダーなど、人間界にはないスケールのものに身を投じるのが好きなんですよね。空を飛ぶ時に風を読むように、『見えないものを見る』ことで視野が広がる。そこで得られた身体感覚が発想のベースになっているとは思います」

「空飛ぶマンタ」は、何枚ものトレーシングペーパーを重ねて構造を検討。

原木を活用した「筏の大地」と船の集合体「ふねの城」で成り立つ「水上のかもしかみち」は、東京湾岸部のまちづくりの提案。

いま目指しているものは、
より自由なヒューマニティ

現在進行中のプロジェクト、新潟県上越市の雪中貯蔵施設(雪室)にも、そんな海法さんの〝身体感覚〞が少なからず活かされている。
「僕は秋田県育ちなので、雪とともに生きる感覚を知る人間として、雪室という建物を設計してみたいと思いました。さらに今回のプロジェクトには、雪を邪魔者ではなく資源としようとする思いや、地域再生が根本にあります。棚田の存続や林業の在り方など、社会的な枠組みの中で、小さな木造の雪室がどのように貢献できるか。大きなテーマに参加することにも意義を感じています」
 海法さんはいま、世の中が狭まった人間関係や責任問題で成立していることに違和感があるという。人がより自由なヒューマニティを得るための一助として、既存の制約から外れた案件があれば、積極的に取り組んでいる。

「その際の自由さとは、人間が人間以外のものと接点をもつ際にどうしても生じてしまう、どうしようもなさや理不尽さをなんとか受け入れる強さを土台にして成り立つと思います」
 ひとつの街区全体のあるべき姿を変えることも、今後やってみたいことだ。
「たとえば、神田神保町の古本屋街をひとつの大きな〝本の街〞とするように、すべてをとっぱらっての再開発でもなく、一個一個を改修していくのでもない。あるひとつながりの環境の中で、改修したり増築したり建築したりしながら、全体像を醸成していくようなことに興味があります」